【あやまたず、催花雨】 HO1:小説家

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【あやまたず、催花雨】 HO1:小説家 ーーーーーーーー

「小条 陸子(こじょう むつこ)よ。文字を書いている。売れないけどね」 「語り得ぬものについては沈黙せねばならない。描写は短く簡潔であればあるほど良い」 「行間なんて読ませない、誤解の生みようのない明瞭な描写ができたなら素敵ね。それをするには、私の頭は足りないけど」

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売れない作家をしている29歳女性。  どちらかというとこじらせ気味の性格で、地の文を切り詰め、言葉を尽くすことに非常な抵抗を示すその作風は、多くの人間に受け入れられるものとは言い難い。彼女の作品は小説というより脚本に近く、新人賞も落選続きで、今は音声作品の脚本で小銭を稼ぎながら、『三林 りく(みつばやし りく)』のペンネームで『薄暮社』に時折小説を持ち込んでいる。  実家が太い。HO2と一緒に住む日本家屋は、親戚のつてで手に入れたものである。  着ている服はドンキで買ったコスプレ。元々裸族だったが、ちゃんと服を着ないと仕事をする気にならない、でもスーツとか着る気にもならないし気分も上がらない、そのために考えたのが地雷服とジャージメイドだ。  生活能力がないわけではないが、やる気があるわけでもない。数日入浴をしないこともしばしばである。  最近は自分の声で音声を売ることにした。ついでにウォッチパーティで映画を見る配信を始めたら、6人ほど来るようになった。

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「結局私はポルノ作家なの。感動、恋愛、人死に、性交、トラウマ、劣悪な家庭、人体破壊、ハートマーク過剰の喘ぎ声。消費されるために文字を書いて、それで日銭を稼いでいる。私の文章に求められるのは、わかりやすく読みやすく、味がすることだけ」 「でも、あなたにだけは……」

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<書いている小説>  彼女はHO2をモデルにした小説を書いている。  その小説の中で、HO2はギリシャ神話の神々の一柱である。HO2は怪物を倒す旅を命じられ、その道中美しい姫と出会い、異国の王子になり、嵐に巻き込まれシンドバッドとハーレムを作り、元寇軍に加わって鎌倉幕府と戦い、名探偵になって陰惨な殺人事件を解決し、戦乙女を指揮して塹壕戦に死をもたらし、惑星巡航艦で星々を巡り、宇宙の神秘に触れたあと、星座よりも大きくなって退廃した人類社会を踏み潰すのだ。その様子は、その時代の登場人物である『あなた』の目線で語られる。『あなた』はもちろん小条のことであるが、なるべく自分らしい特徴を排除しようと腐心した跡がある。

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<追加公開情報 >

『小条陸子のパソコンに表示されていた文書群』

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<シナリオ通過後の文章>

『語りたいあなたへ』